話は、学校崩壊がテーマ。
凄く荒れている中学校。でもまだ間に合うと考える、主人公のみちる。そして親友の優子。この2人が起こす、小さいけれど力強い、奇跡の物語である。
優子は小学校のときにいじめられた経験があり、再び自分がいじめられることを恐れていた。しかし、ある日いやがらせを受け、優子を守ろうとしたみちるは逆にいじめのターゲットにされてしまう。
いじめられながらも毎日学校に通うみちる、学校に行くのを止めてしまった優子。しかし、2人は強い意志で、教室を少しでも変えようと努力をする。
優子は、みちるの幼馴染で、不良の間でのリーダー格の伊佐君をどうにかしようと、公園で伊佐君の話を毎日聞こうと試みる。
そんな優子は凄い。学校から逃げているけれど、みちるを助けてたくての苦肉の策だったに違いない。
2人の意思は、とてつもなく凄い。
特にみちるは凄い子だと思う。最後のほうでは、みんなの共同作業で作った花壇を守ろうとして、自分の頭にレンガをぶつけた。あんなこと、絶対に真似できない。必死で下段を守ろうとしたみちるの思いは確実に誰かの心に残り、教室がどれだけ酷い場所だったのかを気づかせたに違いない。
確かに学校は、隙がありすぎて、どんな学校にも崩壊している部分がある。
瀬尾さんは現役の先生である。だからきっと学校の色々な面を知っているのだと思う。そして、戦う中学生の姿を書きたくなかったんだろうと思う。
戦う中学生。なんてかっこいいんだろう。凄い、と思う。私を含む中学生の誰もがこんなに強い意志を持っていたら、学校はどれだけ素敵な場所になるのだろう。
それぞれの方法で、学校を守ろうと頑張った2人の小さな奇跡がまぶしすぎる作品だった。
父さんは今日で父さんを止めようと思う。
この本を開いてその一文を目にした瞬間、即この本を借りることを決めた。
もう、なんていうか凄い衝撃的な文章。意味の分からない文、といえばそうで取りあえず読み進める前に、この一文を何回か復唱。そうしてある程度私の頭の中で考えた後、読み進めた。実際私が最初思ったりしたのは、離婚? とかだった。
実際読んでみると、「父」という職業を辞めようと考えている父の一言だった。
母は、“家出“中。なんとも不思議な家族の話。
主人公は佐和子。中学生から高校生へ、そんな佐和子の日常を書いた物語である。
家族は全員で、家出中の母、父親を辞めるという父、なんでも完璧な兄、直ちゃん。そして佐和子。
そんな家族の崩壊は、父の自殺未遂事件がきっかけ。いやその前から少しずつ、壊れて痛んだろうけど。
息苦しさなんかに耐えられなくなったお父さんは自殺を図る。その時、お母さんは救急車も呼ばずに、ただ呆然としていた。そして直ちゃんは父の遺書探し。佐和子は自殺を図った父や、直ちゃんと母の行動に驚いたんだと思う。そして、本人達も自分自身の行動に驚いていたに違いない。
自殺するほどのものを抱えていた父や、家出した母、父のようになってしまうんだろうという恐怖、なんでも出来るという圧迫感に押しつぶされる直ちゃん、この頃から3人の中では色々なものが崩壊していく様子が実に強烈な感覚だった。
佐和子は佐和子で絶望のどん底に立たされる。
感動を覚えつつ読み進めていった私は、いくらなんでもこれはないだろう、と愕然とした。
佐和子はいくらなんでも不幸すぎると思う。
しかもその後の、なんか、明るい方向へと向かっていくような兆しが薄すぎて、悲しすぎ。悲しい涙からその後の、感動の涙に移ることが出来なかった。終わりには軽くショックだった。後味が少し悪かった。
…が、来春には映画化が決定したこの作品。何だかんだ言っても、見に行こうと私は思っている。映像で見るとなにか違う感覚を私が覚えるような気がするから。
と、書かれていたがもうこれは完全に負け組女性の話。いや、まだ若いのだけど。
OLのテルコは、マモちゃんという男性にベタ惚れ。彼から電話が来れば長電話。呼ばれたら直にすっ飛んでいく。仕事も何も全く関係ない。マモちゃんが完全に最優先。おかげで仕事もクビ寸前。その行動は更にエスカレートしていく。
話に副題はないのだけれど、場面が変わるごとに短文が書かれている。何個かあげてみる。
ストーカーが私のような女を指すなら、世の中は慈愛に満ちてるんじゃないの
もうほんと、ほかにだれもいねえよってときに、呼び出してもらえるようでありたいっす
思い浮かべた百の不幸も、私に比べたら千倍のハッピーに匹敵するんじゃないだろうか
この3つが特に印象に残っています。なんていうか、凄く分かる。共感する。
この物語の主人公のテルコは、「どうせ私なんか~だから、そう考えればこれは凄い幸せだ。」みたいなネガティブなんだけれど、ポジティブ的な要素が凄い含まれている。あーあ、私と同じ。
そんな感じが上の文には溢れている気がする。
最初のは特に印象に残った。私でもストーカーというのなら深い愛だらけだ。私なんてまだまだという精神が凄い。なんだかんだ言ってテルコは充分、その類の要素が満載だ。
マモちゃんが風邪ならご飯を用意してあげる。本当はマモちゃんの家はとても遠いのだが。
2番目のやつ。あの台詞はテルコの友人、葉子の恋人。というか召使い役のナカハラ君。テルコと同じような人。これからの話でテルコと仲間関係的にちょくちょく出てくる。ナカハラ君が言った一言。
誰かに会いたい、けれどなんでだろう誰も相手が居ない。ああ、あいつがいたじゃないか。と言って呼び出されるようになりたい。というなんとも些細な願い。そんな感じが本当に等身大だと思う。
話が進むとすみれという女性が出てくる。実はマモちゃんはこの人に惚れている。この人が登場し不思議な関係図が出来上がってくる。マモちゃんはすみれさんが好きだが、すみれさんはマモちゃんのことをちっとも好きじゃない。寧ろスミレさんはテルコに興味があるらしい。実に面白い関係。これが凄く大切。
最後はなんだかテルコに感動しっぱなしだった。ナカハラ君は最後のほうで葉子のことを諦めてしまう。最後、別れ際には大声であんたの言っていることは全部きれいごとだ、と叫んだ。その場面に感動っ!さらにさらに・・・。
なんだかんだ言ってもマモちゃんは結局スミレさんを諦めない。それでテルコがとった行動というのはマモちゃんの友人と恋人同士になり、いつまでもマモちゃんの傍に居ること。マモちゃんがスミレさんを諦められないのならそれを応援し、傍で見守っていること。隣に居るのが自分じゃなくても彼が幸せなら・・・。という、その気持ちの強さ。計画したとき、楽しいとさえ思えることが、本当に凄いと思う。同姓として惚れる。
最終的に負け組女子に感動させられました!
空中庭園、映画のDVDが借りれない。
見たいのに。
家族の話。
この家族は「何事も包み隠さず」をモットーにしている。
でもやっぱりそんなのは前書きだけで。みんなそれぞれに秘密を持っている。それをそれぞれの視点から書いた作品。
そそられたのは、それぞれの登場人物の話ごとに変わる副題。
物語の順番に書くと、
1. ラブリー・ホーム (姉)
2. チョロQ (父)
3. 空中庭園 (母)
4. キルト (祖母)
5. 鍵つきドア (弟の家庭教師・父の不倫相手)
6. 光の、闇の (弟)
チョロQが終わった辺りで、タイトルごとに視点が分かるのだと理解して、題名で誰かを想像しながら呼んだ。
空中庭園はお母さんだろうと分かった。ただ、後は全然違った。「キルト」で、お姉ちゃんに視点が戻り、「鍵つきドア」が弟、「光の、闇の」で物語の締めとしてのなんかかと思った。全然違った。
お婆ちゃんもそうだったけれど、何よりお父さんの不倫相手の「ミーナ」にも視点があたるとは思わなかった。
これが空中庭園の1つのポイントではないかと思う。
この家庭教師が現れることで、この家族が全員で気づかないフリをして隠していた、何かの皮が少しはがれてしまったような。
平穏にみせていた家族の嘘を見破ってしまうような。すごい存在。誰かの視点からこの人の登場を書いてはきっとおもしろくない。ミーナ視点だからこそおもしろい。それがすごく新しい感じがした。
さらに、タイトルになっているだけあって、「空中庭園」の、母の話はすごく圧倒的だった。これがもう1つのポイントなんじゃないかと思う。
お母さんの長期にわたるある意味とても怖い計画。
憎悪をどうやって解消するのかという、末の結果。早く結婚して子供を生んで、自分の家を作り、生まれ育った家を早く出て行くこと。そんなことを計画し、父に近づいたという、そのすごさ。物凄い圧倒される。
そんなことを普通、考えられるのだろうか、考えられないような気がする。考えてもきっと実行しない。けれどお母さんは実行したのだ。それがどのくらいの強い気持ちかということが凄く伝わってくる。次のキルトは、お母さんの方のお婆ちゃんの話。空中庭園をしっかり読み、平行させこれを読むことが凄く楽しかった。
まだまだ良い要素がたっぷり詰まっている。年齢が違う、家族それぞれの視点になって書いているので飽きずに読めることが1番良かった。今思うと、老若男女全部兼ねそろえている気がする。そんな空中庭園。自身を持ってオススメできる作品だった。
この本が芥川賞を取った当時は図書館では貸し出し中で読めなかった。本当に、やっと読めた。
話の内容はクラスになじめないハツとやっぱりクラスになじめない余りもののにな川が交わる話。
にな川はオリチャンというファッションモデルの大ファン、という設定。そのオリチャンに出会ったことのあるハツに、にな川は興味を示す。いきなり家に呼ばれ、何があるのだろうというハツの気持ちをよそにオリチャンとどこで出会ったのか、と聞いたり相当なファンらしい。
高校生という年齢設定。その青春の瑞々しさが書かれている。筆者も若いだけあってその瑞々しさ、は随分伝わってきたと思う。
にな川に対する気持ちは恋や哀れみなどではなく、なんとも表現が出来ないような気持ち。そう、“蹴りたい背中“なのだ。
その背中を蹴ってやりたい、そんな感情がすごく新鮮だった。
最後のライブ(だったろうか。)のシーンが心に残った。
にな川とハツ。そしてハツの友達と本当に言えるのか分からないような、一応の友達。という3人の面子がなんとも不気味で、これぞ若いという醍醐味。そんな感じ。そして3人でにな川の家で一晩を過ごす、にな川はベランダで寝ると言ったり、そんなどこか変な感じがした。
変な感じ、それが思春期特有の微妙なモノ。
なんともいえない感情が溢れ出る年頃。それがにな川やハツにもしっかりとこびり付いている。
なんだかんだ言って、オリチャンに夢中すぎるにな川に対し、少なからず嫉妬を覚えるハツもまた可愛い。無駄なところで意地を張ったり、なんていうんだろう、なんかダメ娘って感じがするなハツ。そのダメっぷりが結構好きです。
本だけれども、何気に笑える要素が幾つかあったのではないかなあ、と思う物語。
やっぱり思春期の若さ、瑞々しさを綺麗に書いていると思う物語であった。